歯周病治療
歯を失う原因の第一位は虫歯ではありません
「歯を失う原因」と聞いて多くの方が、真っ先に虫歯を思い浮かべるかもしれません。
しかし実は日本の成人が歯を失う原因の第一位は「歯周病」であるという事実をご存じでしょうか。
歯周病は初期の段階では痛みなどの自覚症状がほとんどなく、静かに進行していくため「サイレント・ディジーズ(静かなる病)」とも呼ばれています。
気づいたときには歯を支える大切な骨が溶かされ、手遅れになってしまうことも少なくない非常に恐ろしい病気なのです。

歯茎からの危険信号
- 歯磨きのときに出血がある
- 朝、口の中がネバネバする
- 歯茎がむずがゆい感じがする
これらは歯周病の始まりを告げる歯茎からの危険信号です。
決して「いつものこと」と見過ごさないでください。
当院では単に歯石を取るだけの対症療法ではなく、歯周病がなぜ発症したのかという根本的な原因を患者様と共に考え、お口全体の健康を取り戻し、そして生涯にわたって維持していくための治療とサポートを実践しています。
あなたの大切な歯を守るために私たちと一緒に歯周病と向き合っていきませんか。
歯周病セルフチェック
以下の項目にあなたはいくつ当てはまりますか?
ご自身の歯茎からのサインを見逃さないでください。
チェック項目
☐ 朝起きたとき口の中がネバネバする
☐ 歯磨きをすると歯茎から血が出ることがある
☐ 歯茎が赤く腫れている部分がある
☐ 以前より歯が長くなったように感じる
☐ 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
☐ 家族や他人から口臭を指摘されたことがある
☐ 歯茎を押すとブヨブヨとした感じがする
☐ 歯が浮いたような感じがする
☐ 硬いものを噛むと歯茎に痛みを感じることがある
☐ 歯がグラグラと動く
一つでも当てはまれば歯周病の注意信号です。
複数が当てはまる方はすでにある程度進行している可能性があります。
歯周病は早期に発見し適切な対応を始めればその進行を食い止めコントロールすることが十分に可能な病気です。
手遅れになる前に、そしてあなたの大切な歯の健康を未来を失ってしまう前に、まずは一度私たち専門家にご相談ください。
歯周病とは歯を支える「土台」が崩れる病気です
歯周病がどのような病気かをご理解いただくために家づくりに例えてみましょう。
どんなに美しく頑丈な家(歯)を建てたとしても、その家を支える基礎(歯茎)が脆く地盤(歯を支える骨)が軟弱であったなら、やがて家は傾きついには倒壊してしまいます。
歯周病とはまさにこの「家の土台」である歯周組織(歯肉と歯槽骨)が細菌によって静かに破壊されていく病気なのです。
歯垢(プラーク)と歯石

歯周病の直接的な原因はお口の中に潜む「歯周病菌」です。
これらの細菌は歯の表面に付着したネバネバとした塊である「歯垢(プラーク)」の中に無数に存在しています。
歯垢はいわば細菌のすみかです。
この歯垢は毎日の正しい歯磨きである程度取り除くことができます。
しかし磨き残した歯垢は唾液に含まれるミネラル成分と結びつき、約2日間で硬い「歯石」へと変化します。
歯石そのものが直接悪さをするわけではありませんが、歯石の表面はザラザラしているため新たな歯垢が付着しやすく歯周病菌にとって格好の足場となってしまいます。
そして一度歯にこびりついてしまった歯石はご自身の歯磨きでは決して取り除くことができません。
歯科医院で専門的な器具を用いて除去する必要があるのです。
気づかぬうちに進行する歯周病の段階
歯周病は自覚症状のないまま進行します。
ご自身の歯茎の状態と照らし合わせながらその進行段階を確認してみてください。

段階 | 状態 | 症状 | 治療方針 |
歯肉炎 | 歯周病の初期段階。歯と歯茎の境目に歯垢が溜まることで歯茎に炎症が起きる。 | 歯茎が赤く腫れたり歯磨きの際にブラシが触れると出血したりするが、この時点ではまだ痛みを感じることはほとんどない。 | 歯を支える骨の破壊は始まっておらず、この段階であれば歯科医院でのクリーニングと毎日の正しいセルフケアによって健康な歯茎を取り戻すことが可能。 |
軽度歯周炎 | 炎症がさらに広がり歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)が深くなってきた状態。歯周病菌がポケットの奥深くに侵入し歯を支える歯槽骨を溶かし始める。 | 歯茎の腫れや出血に加え冷たい水がしみたり歯が浮いたような感覚を覚えたりすることがある。 | 歯科医院での専門的なクリーニングと適切なホームケアが必要。 |
中等度歯周炎 | 歯槽骨の破壊がさらに進行し歯根の半分近くまで骨が失われた状態。 | 歯を指で押すとグラグラと動くのが分かるようになる。歯茎が下がり歯が以前より長く見えるようにもなる。食べ物が歯に挟まりやすくなったり口臭が強くなったりと日常生活においても様々な不快な症状が現れ始める。 | より専門的な治療が必要。場合によっては外科的処置も検討。 |
重度歯周炎 | 歯槽骨が半分以上破壊され歯の根が大きく露出してしまっている状態。 | 歯のグラつきは非常に大きくなり硬いものを噛むと痛みを感じ食事に支障をきたす。歯茎からは自然に膿が出てくることもある。 | ここまで進行すると歯の保存が極めて困難となり残念ながら抜歯を余儀なくされるケースが多くなる。 |
歯周病はお口の中だけの問題ではありません
歯周病の本当の恐ろしさはお口の中の問題にとどまらない点にあります。
歯周病によって炎症を起こした歯茎の血管からは歯周病菌や菌が産生する毒素が容易に体内に侵入します。
そして血液の流れに乗って全身を駆け巡り様々な臓器に到達して、深刻な全身疾患を引き起こす引き金となることが近年の研究で明らかになってきています。
糖尿病との密接な関係
特に歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼしあうことが分かっています。
歯周病があると血糖コントロールが難しくなり、逆に糖尿病の人は歯周病が重症化しやすいという「負の連鎖」に陥りやすいのです。
心臓疾患・脳血管疾患
歯周病菌が血管壁に付着すると動脈硬化を促進させる物質が作り出されます。
これにより血管が狭まり心筋梗塞や狭心症、脳梗塞といった命に関わる病気のリスクを高めることが指摘されています。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
ご高齢の方に多く見られるもので唾液や食べ物と一緒に歯周病菌が誤って気管に入ってしまうことで発症する肺炎です。
早産・低体重児出産
妊娠中の女性が歯周病にかかっていると血中に入り込んだ歯周病菌の毒素が子宮の収縮を促し、早産や低体重児出産のリスクが高まることが報告されています。
お口の健康は全身の健康、そして未来の健康を守るためのまさに「入り口」なのです。
歯周病と向き合う当院の治療アプローチ
歯周病治療の成功の鍵は歯科医院での専門的なケアと患者様ご自身のセルフケアの両輪を、いかに高いレベルで継続できるかにかかっています。
当院では以下のステップに沿って患者様一人ひとりに合わせた治療計画を立てゴールを目指します。
Step1:精密な検査と現状の把握

まず現在の歯周組織の状態を正確に把握するための精密な検査を行います。
歯周ポケットの深さの測定、歯の動揺度の確認、レントゲン撮影による骨の状態の確認などを丁寧に行い客観的なデータに基づいて診断します。
また当院では位相差顕微鏡を用いてお口の中にいる細菌の種類や活動性を実際に見ていただくこともあります。
ご自身の目で「敵」の正体を確認することが治療への意識を高める第一歩となると考えています。
Step2:原因を除去する徹底した初期治療

歯周病治療の基本でありもっとも重要なステップがこの初期治療(歯周基本治療)です。
治療の目的は歯周病の根本的な原因である歯垢と歯石を徹底的に除去することです。
歯科衛生士がスケーラーと呼ばれる専門の器具を用いて歯の表面や歯周ポケットの中にこびりついた歯石を丁寧に除去していきます(スケーリング、ルートプレーニング)。
同時に患者様一人ひとりのお口の状態や歯並びに合わせた効果的な歯磨きの方法を指導いたします(ブラッシング指導)。
歯科医院でのケアとご自宅でのセルフケア。
この二つが揃って初めて歯周病は改善へと向かいます。
Step3:必要に応じた歯周外科治療
初期治療を行っても深い歯周ポケットが部分的に残ってしまいセルフケアだけではコントロールが難しい場合があります。
このようなケースでは必要に応じて外科的なアプローチをご提案することがあります。
代表的なものに「フラップ手術」があります。
これは歯茎を一時的に開くことで歯の根の深部に付着した歯石を目で直接確認しながら徹底的に除去する手術です。
もちろん外科的な処置は患者様のご負担も伴いますのでその必要性やメリット・デメリットを十分にご説明しご納得いただいた上で判断いたします。
Step4:健康な状態を維持するメインテナンス

歯周病は一度症状が改善しても日々のケアを怠れば容易に再発してしまういわば「生活習慣病」のような側面を持つ病気です。
治療によって得られた健康な状態を長く維持していくためには治療後も定期的に歯科医院へ通っていただく「メインテナンス」が不可欠となります。
メインテナンスではご自身の歯磨きでは落としきれない歯垢やバイオフィルムを専門的な器械を使って徹底的に清掃(PMTC)するとともに再発の兆候がないかを厳しくチェックします。
この継続的なサポートこそが生涯にわたるお口の健康を守るための確実な方法です。
あなたの歯を守るパートナー【歯科衛生士】

歯周病治療において歯科医師と共に中心的な役割を担うのが「歯科衛生士」です。
歯科衛生士は歯石除去などの専門的なケアを行うだけでなく、患者様のお口の悩みに耳を傾けセルフケアの方法を一緒に考え、時には励ましながら治療のゴールまで伴走する「一番身近なパートナー」です。
当院では経験豊富な歯科衛生士が患者様一人ひとりと真摯に向き合い、長期的な信頼関係を築きながらお口の健康をサポートしてまいります。